第46回日本臨床細胞学会スライドセミナー
症例8解説
長崎大学大学院顎口腔機能再建学 関根浄治
長崎大学医学部・歯学部附属病院病理部 穴見正信
症例:26歳、女性
主訴:右側口蓋部の黒色病変の精査希望
現病歴:数年前より、口蓋部の黒色病変に気付くも放置。平成16年3 月、歯科治療の際に同病変の精査を勧められ、同医の紹介により同年3月5日長崎大学医学部・歯学部附属病院口腔外科を受診。
既往歴・家族歴:特記事項なし
全身所見:特記異常所見なし
局所所見:右側口蓋部に直径7mm、境界やや不明瞭な類円形の病変を認めた(Photo
1)。経過:即日擦過細胞診を行ったが、class1で悪性所見は認められなかった。その後外来にて経過観察を行っていたが、病変のわずかなsize upを認めたため、同年6月23日、全摘生検術を行った。
供覧する標本は、切除標本の割面捺印である。
Photo 2:大型の細胞集塊で、軽度の核の重積が見られ、N/C比が高く、クロマチンは増量している(Pap染色、X200)。
Photo 3:大型の細胞集塊で、細胞質内に褐色の顆粒を認める(Pap染色、X200)。
Photo 4:汚い背景の中に、N/C比の高い小型円形細胞が不規則な集塊を形成し、細胞質内には褐色の顆粒を伴う(Pap染色、X400)。
Photo 5:出血性背景の中に円形の杯細胞が見られ、細胞質内には粘液様物質と褐色の顆粒が見られる(Pap染色、X400)。
Photo 6:細胞境界不明瞭な紡錘形細胞と桃赤色の粘液様物質を有する細胞集塊が見られる。一部には黒色顆粒が充満した円形細胞が見られる(Giemsa染色、X200)。
Photo 7:扁平上皮への分化を示す癌巣と印環細胞および腺管構造を有す癌巣に褐色の顆粒が見られる(HE染色、X200)。
Photo 8:印環細胞を主体とした腺管構造を示す部分に、褐色の顆粒を見る(HE染色、X400)。
解答の選択肢
1)色素性プロゴノーマ
2)色素性粘表皮癌
3)腺房細胞癌
4)悪性黒色腫
5)色素性多形性腺腫
以上の所見より、メラニン顆粒を伴う粘表皮癌と診断された。
参考文献
Joji Sekine, Masanobu
Anami, Shuichi Fujita, Michael Vieth, Tsugio Inokuchi: A Case of Mucoepidermoid
Carcinoma with Melanin Pigmentation Manifested in the Palate, Virchows Archiv,
446:460-462, 2005