症例 6

症例の経緯
42歳女性、住民検診にて左乳房のAB領域に腫瘤を触知され、当院の外科を受診。乳腺症の臨床診断にて経過観察されていたが、最近、超音波検査において左AB領域に高エコー領域が明瞭となり、左E領域にも同様の所見がみられてきたため、エコー下穿刺吸引細胞診が施行された。

標本作製法:直接吹付け法


左AB領域の細胞像

001 002 003 004 005
006 007 008 009 010

判定
提供施設:
細胞の採取量が少なく、背景には挫滅した乳管上皮細胞などがみられ、硬い間質を持つ腫瘤より採取されたと想像されました。そして、筋上皮細胞が認められる腺管(腺房)状集塊と楔状様の小型集塊が散在性に出現していました。個々の細胞は、軽度の大小不同があり、核の向きがバラバラになっていますが、明らかな癌細胞とできる細胞異型は認めませんでした。また、一部にはアポクリン化生様の変化を示す細胞もみられました。これらの所見から、検体適正 正常あるいは良性として、推定組織像は開花期・硬化性腺症などの良性病変が最も考えられました。

事前鏡検施設:上皮性細胞の集塊がごくわずかで、背景に脂肪組織が粗い網目状に認められる。その中の1ヶ所に乳管上皮のCell Clusterを認める。脂肪組織内への侵入(浸潤)するような所見はなく、重なりあう印象を受ける。筋上皮ははっきりしないが細胞の結合は強く核は小型で異型に乏しい。シート状の配列をしており正常あるいは良性と考えた。


左E 領域の細胞像

0001 0002 0003 0004 0005
0006 0007 0008 0009 0010
0011 0012 0013    

判定
提供施設:
細胞が中等度に採取されていて、背景には泡沫化した組織球が散見されました。そして、標本中の1ヶ所に石灰化物質と伴に出現している乳管上皮細胞の集塊がみられ、筋上皮細胞が確認できる偽篩状・腺管状・シート状の集塊と伴に筋上皮細胞が不明瞭で乳頭状重積集塊か充実状重積集塊か鑑別に迷う集塊が混在して出現していました。これらの細胞集塊を我々は乳頭状重積集塊と判定しましたが、筋上皮細胞(大乳管型)が不明瞭であった事と、個々の細胞に明らかな癌細胞とできる細胞異型は認めませんでしたが、細胞に単一性があるのが気になり、検体適正 鑑別困難として推定組織像は乳頭状病変を疑いました。なお、標本中に高円柱状を示す細胞や真の乳頭状集塊が出現していない事より、乳管乳頭腫を強く疑うとコメントを入れ、鑑別診断としては非浸潤性乳管癌の嚢胞内乳頭癌があげられると記載しました。

事前鏡検施設:背景には泡沫細胞と紡錘形をした間質細胞が見られ、その周囲に多数の乳管上皮を認める。結合性が強くシート状あるいは乳頭状集塊として出現している。核所見は軽度異型で乳管上皮と筋上皮の二相性構造があり、また典型的ではないが小数のアポクリン化生様の細胞も認められ、Intraductal papilloma(正常あるいは良性)と考えた。


エコー画像と摘出物

01 02 03 04

左AB 領域の組織像

05 06 07 08 09 10

組織診断:Florid adenosis & Sclerosing adenosis


左E 領域の組織像

11 12 13 14
15 16 17  

組織診断:Intraductal papilloma & Ductal hyperplasia