症例 7

症例:80歳 男 フレムメルト法蓄痰

経緯:2000年住民検診喀痰細胞診 D、X線、CT 異常なし、BF 右肺葉別洗浄細胞診 ClassU、BF 左肺葉別洗浄細胞診 下葉よりClassW、BF 左下葉区域支別ブラシ ClassU、GIF 異常なし。2001年再び住民検診喀痰細胞診 D判定、


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判定:D 扁平上皮癌の疑い

孤立散在性に異型扁平上皮細胞が認められた。小型で類円形から不整形、OG好性で、一部彩度が高い、N/C比は大、核形不整が見られ、二核細胞が目立った。クロマチン所見は中等度から一部高度増量がある。しかし、クロマチンにややぬけた所見が目立つことから、扁平上皮癌の疑いとした。表層の異型扁平上皮細胞が主体。細胞質厚く、一部光輝性あり。 核腫大や核型不整がみられ、クロマチン増量しており、クロマチンパターンは濃縮・融解状など多彩である。キャニバリズムも認められ、構築の乱れが伺われる。


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判定:D 高度異型扁平上皮

スライド1、4、6:OG好性の、胞体のやや厚みの有るcellが見られる。核異型も見られるが、クロマチンの増量は軽度で、輝度は高くない。 スライド2、3:クロマチンがやや増量しており、異型は極、軽度。N/C比は低く、悪性としての所見に乏しいと考える。 スライド5、7、8:OG好性、胞体がやや厚い感じがあるものの、輝度は低く、クロマチンの増量は軽度。一部に多核様所見が見られる。 スライド9〜12:スライド5同様の所見が見られる。ゴースト状のcell見られる。スライド13〜16:やや輝度が高いが、胞体が薄い感じがあり(右上)、一部にビザーなcell見られる(左下)。 以上から、判定"D"とし、高度異型扁平上皮細胞と考える。 癌との鑑別は、クロマチンの増量が少ない事、弱い核異型、N/C比、核小体の見られない事と、きれいな背景から区別した。


組織診断: 咽頭癌(扁平上皮癌)c-T1N0M0,stageT

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講師解説 

提示されて細胞は細胞のサイズ、核所見などの点で均一ではありません。それぞれの細胞が由来したであろう病変を推定する必要があります。 講議の項で詳しく述べましたが、扁平上皮癌細胞が錯角化に陥りますと1.核のサイズが縮小する。2.核小体等の核内構造が失われる。3.クロマチンの染色性が低下する。等の変化が起こります。クロマチンの増量した細胞を癌細胞と考えていると、かなりの癌細胞をそれと認識しない可能性があると思います。

 (画像は拡大しません) 

平成13年の生検標本、喉頭部

中等度〜高度異型性表層細胞も小型化しているが僅かにIntermediate zoneの形成が伺える。

異形成。表層細胞の細胞質は広く、薄い。

平成12の集検細胞診標本中の異形成由来の細胞。細胞は大きく、胞体は薄くて広い。

平成12年の標本中の異形成由来の細胞。核周囲の胞体は辺縁の胞体に比し僅かに厚い。

Severe dysplasia からIn situ。

平成12年度の細胞診標本中に観察された上皮内癌由来を疑う細胞。小型で核に異型性がある。

平成13年の細胞診標本中に観察された異形成由来の細胞。